道路のり面は安全の確保上、土砂の崩落や雪崩の防止機能を持たなくてはならない。一方、景観的にも周囲に調和して、新しい道路環境を創出することも要求されている。このように、今後、道路には、人や物が安全に移動できるだけではなく、それ以上の機能が求められてくるものと思われる。そういった意味でも、山地を走る道路は、のり面の面積も大きく、その緑化は重要な意味を持っている。現在、行われているのり面緑化工は、おもに張り芝工や吹き付け工である。しかし、芝は、のり面で発生する雪崩のすべり面となる。一方、のり面で発生する雪崩を防止するには、雪崩防止柵を設置するのが、最も効果的である。しかし、これらの大規模な工作物は、かなりの経費を要するうえに、道路の景観も損ねる。確かに長大のり面や急傾斜などにおいて、短期間に効果を上げるには、経費及び労力の集中投下が、やむを得ない箇所もある。しかし、長期的にみれば、すべてが有効とは言い切れない。いずれにせよ今後、様々な試みを行い、多用な技術を確立する必要がある。このような技術の1つとして木本類の導入があり、これには天然更新(自然に植生が侵入すること)による方法と植栽による方法の2つがある。そこで、これらの技術の基礎資料とする目的で、道路のり面へ自然に侵入した木本類の生育状況の調査と、急斜面地に植栽した樹木の生育状況の調査をおこなった。 |