都市化の進行とともに安全な社会基盤の形成が求められ、コンクリート護岸及び築堤に代表される河川改修が進められてきた。一方、河川は緑が豊かで虫、魚、鳥などの生物が生息する都市内における貴重なスペースであるため、近年、河川事業として都市開発や災害に備える国土保全事業と現地の生態系を勘案した環境保全との両立、共生が重要な課題となっている。この点を踏まえて、建設省では人間生活と調和する豊かな自然の保全と創造に配慮しつつ「多自然型川づくり」を、北海道開発局では「魚、鳥、人にやさしい水辺づくり(AGS;アクア グリーン ストラテジー)」を推進しているところである。旭川地方では都市部の開発によりすみかを失ったカワセミやショウドウツバメが河岸懸崖部に営巣しており、河川工事で支障となった場合にはその対策として、巣立ちまで工事を一時中断するか、営巣に支障の無いように覆いをするなどの応急対策を講じてきたが、そのために工事の遅延や工事費の増大を招いていた。都市化の進行に伴い、鳥類、魚類及び昆虫類などの生息環境は悪化し、都市内においては、まだ自然が残っている河川区域にすみかを求めざるを得ない状態となっているが、前述したような理由から、この河川区域でも減少する傾向にある。本報文は、このような背景と課題に対して、平成4年度に旭川市周辺の石狩川及び牛朱別川において行ったカワセミ・ショウドウツバメの人工営巣実験の試みと事業への活用及び昨年度から管内で実施してきたAGSモデル事業の概要について述べるものである。 |