近年の河川事業に求められるものは、治水安全度の確保はもとより、河川空間での潤いのある自然環境の創出であり、とりわけ水辺の系としての生物生態環境の保全・再生が重要視されてきている。特に最近は、地域の水辺に再びホタルを呼び戻そうとの取り組みが全道各地で積極的に行われている。しかしながら、道内の実河川において自然繁殖の定着に成功したと言う事例は、まだ少ないと言うのが現状である。その理由は様々であろうが、大半はホタルが生活の場となり得る水辺の物理的条件や食物連鎖による生物相互の関係がうまく構成されなかったことにあると思う。その事は、ある生物種の生息環境を人為的に再生しようとすることがいかに難しく、また、その構成要素も複雑に関連しあっていることを示唆している。一方、当事業所の所在する千歳市域においては、幸いにもヘイケボタルが自然状態で生息しており、このホタルの生息環境、すなわち水環境の実態を詳細に調査する機会を得た。生物生態系に配慮した水辺造りを計画するには、事前の周到な現状調査が必要であることは当然であるが、ややもすると既往の事例や調査・研究等の文献により計画自体を大きく左右している場合も少なくない。ここでは、千歳市に生息するホタルを指標種として行った千歳川上流部周辺での水環境調査について紹介すると共に、この調査から得られた知見をもとに今後の水辺づくりのための調査手法について検討したので報告する。 |