近年の世界的な環境論議の高まりを受けて、砂防事業においても各地で環境の保全を目的とする工法が導入されている。現在の砂防工法は、土砂災害の防止を目的として流域を土砂収支の観点からのみとらえ、約100~150年単位の土砂量を対象にした土砂処理計画の中で実施されているため、環境保全対策としてはすでに配置・構造の決定した施設に対して形状を工夫する、自然石を張る等表面処理を行う、施設周辺の緑化を図るなどの方法によって行うことが主流である。しかし、一般に砂防施設が配置される浸食の進む斜面や不安定な堆積地、または排除されるべきとされている流木についても、ある種の生物に対しては重要な生息環境となっており、現在の工法ではこのような生物の保全は非常に難しいと言える。砂防事業の目的として土砂災害防止と合わせて環境の保全を実現しようとするためには、個々の渓流についてでき得る限り各種生物の生息状況を把握して、施設もそれらの生物に対する影響を考慮しながら配置していくことが必要となってくる。このような考え方から筆者らは「生態砂防工法」を提案する。本報では、第1報として生態砂防工法の考え方と、豊平川水系真駒内川に於いて行った渓流環境調査結果について報告する。 |