ダムは、時期により流量が変動する河川の水を貯留することで安定した水利用を可能にするために、あるいは洪水を一時的に貯留して流量変動を小さくするために建設される構造物であるが、近年、ダムが建設される直接的な目的である治水、利水への利用以外に、ダム及びダム湖畔、ダム周辺の土地をレクリエーショナルな目的に利用しようという動きが活発化している。しかし、ダム湖には水質問題や水位変動など、ダムの利用を進める上でネックとなる悪条件がいくつかある。ダム湖の水質については、近年急速に高まりを見せている自然環境、地球環境への関心を背景に、ダム事業者が自然にやさしいダム建設を積極的に進めており、それらの中でダム湖水質保全対策を積極的に推進している。また、自然の湖とは異なるダム湖の特徴として、年間を通じて水位が大きく変動するということがある。そのため水没、陸化を繰り返すダム湖岸は植生の乏しい裸地が広がることになり、この湖岸裸地は水位低下時に大きく姿をあらわし、ダム湖の景観を悪化させる要因となっている。湖岸は波浪による侵食、長期間の水没、湖水の崩落など幾つものストレスを受けるなど、植生を定着させるには悪い条件が重なっているが、以前より、耐水没性の植物を使用することで緑化が可能だという指摘がなされている。本稿は過去に行われた試験・報告などを踏まえ、景観を悪化させ濁質の供給源ともなる湖岸裸地について、幾春別川総合開発事業で建設する新桂沢ダム(昭和32年完成の桂沢ダムを嵩上して建設する)および奔別ダム(幾春別川支川の奔別川に新規に建設する)の湖岸緑化を目的として、本年度桂沢ダムにおいて実施した湖岸裸地緑化試験の概要について報告するものである。 |