昭和36年に農業基本法が成立し、北海道では冷害を受けない酪農や肉牛飼養などの畜産がそれまで以上に振興されるようになった。その結果、乳用牛および肉用牛の預託育成と乾草の供給を目的とした大規模な公共草地(公共牧場の草地を言う)が必要となり、既存牧野の改良あるいは新規の草地造成が必要となった。このため、昭和37年に牧野法を根拠法令として草地改良事業が公共事業として行われるようになった。さらに、草地改良の緊急性、重要性あるいは事業内容の高度化に対応するため、昭和39および40年に土地改良法が改正された。その結果、草地の造成改良も土地改良事業に含まれるようになり、大規模な事業については国営草地改良事業で実施されるようになった。この事業は昭和45年の農用地開発事業の発足に伴い、国営草地開発事業に発展した。国営草地開発事業は地方公共団体あるいは農協等が管理する公共草地を建設するものであり、これにより上記の目的を達成し、飼養農家の経営規模の拡大(増頭)および農家経済の安定を図るものである。昭和40年当時の北海道の乳牛頭数は318千頭、肉牛頭数は14千頭であったが、平成3年には乳牛が870千頭、肉牛が334千頭で、それぞれ2.7倍および24倍に増加した。この増頭に公共草地は大きく寄与してきたと考えられる。草地造成は野草地、未開の原野あるいは山林を人工草地にするものであり、一般には地表の原植生を除去あるいは処理する障害物処理作業、耕起砕土や土壌改良資材の散布・混和をする播種床造成作業および施肥・播種・鎮圧作業よりなる。なお、家畜を用いて造成を行う蹄耕法が採用される場合もある。そして、必要に応じ、土地改良(暗渠、心土破砕、客土あるいは除礫など)あるいは傾斜改良が行われる。これら工種の必要性は事業実施に先行する地区計画調査での造成対象地の土地資源調査で抽出される。本報告は北海道内の国営草地開発事業のための土地資源調査で明かにされた土地条件を分類整理して、造成地の史的展開過程を考察するとともに今後の公共草地の整備に土地資源的側面から資するものである。 |