昭和63年度の漁港法改正により、漁港内における蓄養施設の整備が可能となった。北海道においても、第8次漁港整備長期計画(昭和63~平成5年度)に基づいた蓄養施設の整備は、抜海漁港、雄冬漁港、追直漁港の3漁港において事業実施されているが、3漁港以外の多くの漁港や港湾においても、中高級魚介類を対象にした蓄養事例が多数見られる。漁港内蓄養は、漁業者や流通業者の経験に基づいて、試行錯誤的に実施されていることが多く、蓄養施設整備や施設管理等の基本方策が確立しているとは言い難い。しかしながら、現在策定中の第9次漁港整備長期計画(平成6~11年度)では、上記の3漁港以外の漁港からも、蓄養施設整備の事業化要望が出されていることもあり、蓄養施設整備に当たっての整備目標(蓄養施設の計画や設計に際して準拠すべき指針、例えば、蓄養に応じた波浪静穏度、海水交換などの流動・水質環境等の考え方)を早急に策定する必要が出てきている。そのため、水産土木研究室では、蓄養施設整備に当たっての整備目標策定の一環として、平成元年度から、①抜海漁港における蓄養水面施設周辺の総合的な環境調査、平成4年度から、②蓄養施設整備に対する飼育生物の立場からの留意事項の整理、③漁港内における流動環境と水質環境の変動に関する数値解析プログラムの開発と、モデル漁港を対象にした数値シミュレーションを実施している。本年度より調査開始した②③の事項について、前報告において、蓄養施設整備に対する飼育生物の立場からの留意事項について報告したので、本報告では、漁港内における流動環境と水質環境の変動に関する数値解析プログラムと、モデル漁港を対象にした数値シミュレーション結果の概要について報告する。 |