磯浜岩礁域はフジツボ類やムラサキイガイ等に代表される付着性の強い種をはじめ、岩表面を自由に移動するウニ類や巻貝類、さらに海藻類など多様な生物が基質表面で競合しながら生息している場である。生物種群の組み合わせとそれらの現存量は環境の特性・履歴を反映する指標であるといわれている。従って防波堤等の人工構造物の築造による新しい環境の創出は生物種群の形成とその変遷を明らかにし得る点で極めて興味あるばかりでなく、人工構造物の天然岩礁域との対比により、底生生物生息場としての評価を可能とする事も考えられる。水産土木研究室では、昭和62年度より防波堤などの漁港・港湾施設がもつ岩礁機能、すなわち防波堤設置に伴い、防波堤周辺に形成される岩礁性の水産動植物群落に関する調査を松前港、瀬棚港で実施してきた。平成4年度は、これまで有用水産生物(コンブ、ワカメ、ウニ)に限られていた調査種の範囲を他の生物にまで広げ、港湾構造物に生息する種々な生物が形成する群集の「構造特性」を把握することを試みた。本報告は、港湾構造物について、場所、水深、構造、設置期間等による群集構造の差や傾向についての解析を行い、構造特性を天然岩礁域のそれと比較することにより、港湾構造物の生物生息場としての評価を検討したものである。 |