漁港は、漁業の生産基盤として必要不可欠な存在である。しかし、これまでの漁港整備は漁船が安全に係留できる岸壁や泊地の確保、漁船の大型化への対応を優先してきたため、その建設による藻場・磯根漁場の喪失、海水交換の悪化という問題に対する配慮はややかける気らいがあった。近年特に、環境保全問題が注目されるようになり、漁港の整備においても周辺環境に配慮した構造物やその配置を重視する時代を迎えている。これらのことから、漁港の建設によって周辺の水産環境への影響をできるだけ少なくする構造物や積極的に周辺の水産環境を改善するような構造物の開発、すなわち生き物に優しい港づくりの可能性を探るため、環境保全型漁港構造物建設技術開発調査、いわゆる『さかなのすむみなと調査』が様似漁港をモデルケースとして水産庁より指定され、平成3・4年度の2年間にわたって実施された。この調査の対象水産物として本漁港の位置する太平洋岸に広く分布し、漁獲高も高いコンブが選定された。一方、様似町は、その内外に親子岩、日高耶馬渓、ソビラ岩など数々の風光明媚な奇岩や高山植物群落を擁するアポイ岳など自然に満ちた観光資源を有している。しかし、日高地方の観光客の入り込みは夏季に集中し通過型の観光がほとんとである。特に本漁港周辺は親子岩、ソビラ岩などがあり、本漁巻を地域振興活性化の中心的な存在とするために、本漁港の西側の海岸を利用して北海道庁が主体の海岸環境整備事業や漁港内の漁港環境施設用地に町が主体の公園整備事業が展開されている。この二つの環境整備事業を結び付けるために、既設護岸の胸壁の天端を遊歩道化し、地域住民をはじめ観光客が親しみを持てる施設にすることが平成5年度に行われる予定である。本報文は、上記の調査結果の報告及び将来施工を予定している漁場保全・増殖型構造物や親水性施設を紹介し、本漁港の将来展望について報告するものである。 |