従来、外郭施設である防波堤は波を防ぎ港内の静穏水域を確保する目的で作られており、防波堤上は一般に安全管理の観点から市民の立ち入りが禁じられている。しかしながら港によっては休日等、防波堤上に多くの釣り人が見られるように、海と市民とが接することのできる魅力ある空間の一つである。港湾域において市民が海を楽しむことのできる「親水防波堤」を整備する際、技術的な課題のほかに利用時の越波や波の打ち上げに対する安全性が重要な問題となる。この防波堤上の越波水の運動と波力の関係については、高橋らによって研究成果が示されている。高天端防波堤とは、通常の防波堤天端高よりも高くすることで、防波堤上への波の打ち上げ高や越波頻度を少なくし、利用者の安全を計ろうとするものである。通常の防波堤天端高は静水面上が設計波高H1/3の0.6~0.8倍程度の高さであるが、高天端防波堤では1.0~2.0H1/3位の天端高のものを言う。しかし、この高天端防波堤に作用する波力特性に関する杉本らの断面実験の結果では、重複波型砕波の発生により、通常の防波堤に作用する波力よりも増大する場合があることが明らかにされた。本報文では、高天端防波堤に作用する波力が斜め入射波の場合、防波堤に対してどのような影響を与えるかについて平面水槽で滑動実験と波圧実験を行ない、波力特性を明らかにしたものである。 |