一般に地すべり地における地表での変動景観測は、伸縮計や地盤傾斜計により行われている。これらは地すべりの範囲やブロック区分をはじめ、地すべりの変動状況に関する適切な情報を提供する。このため地すべりの地表面変動量観測結果は、対策工の選定や設計さらに地すべり発生予知の基礎資料として必要不可欠である。しかし地すべり範囲が広い場合、伸縮計や地盤傾斜計により地すべり全体の変動を把握するためには多大な経費を必要とする。このため安価で精度の高い観測手法が求められている。近年、応用されている新しい測量技術としてGPS(Global Positioning System)による測量方法がある。これは人工衛星から送信される電波を受信することにより、任意の地点の座標位置を高精度で観測できるものである。このため地すべり地域においては、地すべり土塊上に設定した測定点において定期的に観測を行うことにより、地すべり変動量のみならず変動方向をも捉えることが可能である。本報告では、地すべり斜面を対象としてGPS観測を実施し、GPSによる地すべり変動量観測結果と従来より地すべり変動量の観測に汎用されている伸縮計による測定結果や比較を行うことにより、GPSによる地すべり挙動監視への適用性について検討した。 |