本報告は、現場担当者が富栄養化にともなう水質障害を未然に予測して、対応できるような方策を目標として、一つの方法論を提案したものである。富栄養化現象が問題となっている水域では、現象のメカニズムの解明や各種施策に活用する目的で、長期的な時間スケールの水質予測がおこなわれてきた。しかし、得られる結果は実現象の予測結果というよりは、流入量や気象条件といった各種境界条件の精度の感度分析的な結果として解釈されるものであった。一方、管理者が水域を管理する際に、予報的な意味あいで水質変化の動向を知ることができれば、富栄養化現象に対しても有効な対策をおこなうことが可能であると考えられる。そこで、1週間程度といった短期間の水質予測手法の検討を試みた。この手法の中では、水質のモデリングで一般に用いられている生態系モデルにより、水温やクロロフィルa濃度の推算をおこなった。また、このような予測計算の際に、誤差の蓄積による計算結果の実測値との相違が大きな課題となっている。これに対しては、蛍光光度計から毎時間の実測データを求め、カルマンフィルターを用いて計算結果を修正する手法によって精度の高い数日先までの予測が可能となった。この時、境界条件となる気温や日射量は、週間天気予報をもとに推算し与えた。 |