札内川ダムは十勝川水系札内川上流、河西郡中札内村に建設中の多目的ダムであり、堤高114m、堤頂長300m、総貯水容量5,400万m3、有効貯水量4,200万m3の重力式コンクリートダムである。当ダムの大きな特色の一つは、コンクリートに使用する混合セメントとして、中庸熱ポルトランドセメントに高炉スラグを重量比にして55~65%混合したものを用いていることである。さらに、建設位置が寒冷地であることから、コンクリート打設期間が5~10月と制限されており、冬期間は打設を中止して越冬することとなる。ダムの安全性の観点からコンクリートダムにひびわれを発生させずに施工を行うためには、施工期間中の外気温による急冷や越冬期のコンクリート冷却に対する養生対策が、必要不可欠となる。ダムのようなマスコンクリートに発生するひびわれの原因の多くは、温度応力に起因するものである。これらに起因するひびわれの発生の危険性を評価したり、養生対策を検討する手段として、水和熱によって生ずる温度応力と、コンクリートの引張強度を比較することが一般に行われている。しかし、コンクリートの引張り破壊を評価する場合、応力レベルでの予測に必要な弾性係数がコンクリートの硬化過程において変化するため、その設定がきわめて難しく、弾性係数を介在させないひずみレベルでの予測の方がより直接的で解析精度もあがると考えられる。以上のようなことから、本報告は外気温と接する外部コンクリートに着目し、外部コンクリートがうける温度履歴およびひずみ履歴を調査し、その調査結果から温度降下速度・ひずみ速度を求め、外部コンクリートの引張り破壊ひずみをあらわす伸び能力とひずみ速度の関係を検討した。 |