北海道における水田水管理では、イネの初期生育を促進させるための間断取水や冷害危険期の低温からイネを保護するための深水潅漑が特徴的である。前者はイネの生育に水温が大きく影響する活着期から幼穂形成期のはじめまでに早朝あるいは夜間を中心に取水し、圃場内の水温上昇を図るものである。配水系が管水路である場合には、このような間断取水に伴う取水の時間的集中は、用水の配水不均等の原因となる。従来、水路の実施設計では、圃場での必要水量(計画流量)を定常的な流量で配水することを設計条件としており、水需要の時間的な変動は考慮されていないことが多い。円滑な水管埋を実現するためには、用水需要の変動を考慮した施設計画が必要であるが、管内流量の時間変動の報告例は道内はもとより府県でも少なく、現状では定量的な議論が困難である。畑地潅漑の施設計画において水需要パターンを想定すると同様に、水田パイプラインにおいても水需給パターンが整理できれば、いわゆる図上シミュレーションの精度向上が可能となる。このような背景から、本報告では剣和幹線用水路の配水系パイプラインにおける流量の連続測定より、流量変動の特性や送水系との接点に調整池を設置する場合の必要容量の算定、さらに水田パイプラインにおける水需要のモデルについて述べる。 |