十勝地域は、北海道の東南部にあって、大雪山系と日高連峰を背景に帯広市を中核とする1市16町3村からなる108万haの広大な区域である。農業経営形態も概略的には畑作と酪農の混在した土地利用型農業が行われている。耕地面積は26万ha、農家戸数約8,900戸で戸当り耕地面積にして29haと大規模な機械化農業が展開されている。主要作目は、畑作4品の小麦・馬鈴薯・豆類・てんさいと牧草等飼料作物であるが、牧草地8.2万haで地域人口36万人を上回る約38万頭の乳・肉牛を飼養しており、ha当たり4.6頭を実現した多頭飼養地域である。その結果、土地生産性が向上した反面、家畜糞尿処理が地域農業の将来を左右する大きな課題と成りつつある。このような地域の課題に対応して、国営農業農村整備事業においては、農業用水を使用して効率的に糞尿の還元を行う肥培かんがいを進めており、より地域に適合したシステムとするため各種の調査検討を行っている。この調査検討にあたっては、学識経験者による検討委員会(十勝地域・環境保全型農業高度化検討委員会)がH5年に設立され、スラリー散布が周辺自然植生に及ぼす影響と緩衝緑地帯の検討についても委員会の検討課題の一つとなっている。今回の報告は、芽室町西上美生を例としてスラリー散布区及び無散布区に生育する草木の植生調査を実施するとともに、草本類を採取し成分含量を比較して、スラリー散布が自然植生に及ぼす影響を考察するとともに河川等への負荷軽減を図る緩衝緑地帯としての可能性について報告するものである。 |