酸性硫酸塩土壌は、硫黄化合物により強酸性(pH3.5以下)を呈するか、硫黄化合物が酸化されることにより、強酸性となる土壌であり、海成のものと火山性のものが知られている。海成の酸性硫酸塩土壌のうち、洪積世や新第三紀の海成堆積物層から見いだされているものは化石的酸性硫酸塩土壌と呼ばれる。洪積世や新第三紀の海成堆積物層の分布地は比較的傾斜が緩やかなことから開発対象になりやすく、大規模な切土工事により、化石的硫酸塩土壌がしばしば露出することがある。海成の酸性硫酸塩土壌は、海水が供給される低湿地の、還元状態が発達した底泥中に生成する土壌で、この土壌中には、海水由来のSO42-と底海中のFe3+が還元されて生成する、パイライト(FeS2)を主体とする易酸化性硫黄が集積している。化石的酸性硫酸塩土壌は、ある地質年代に生成した海成酸性硫酸塩土壌が、地殻変動により陸化し、地中深く空気に触れる事なく、還元状態を保ったまま保存されていたものである。化石的酸性硫酸塩土壌は、嫌気的条件下ではほぼ中性であることが多いが、切土工事などで露出し空気に晒されると、土壌中の易酸化性Sが酸化を受けて硫酸に変化し、土壌はpH3.5以下の強酸性を呈するようになる。したがって、化石的酸性硫酸塩土壌が露出した法面に植生を定着させる場合、酸性害から植生を防護する対策が必要であるが、このような法面に対する緑化対策の調査研究事例は少ない。筆者らは、化石的酸性硫酸塩土壌の露出した切土法面に対して2種類の植生工法を試験施工し、施工後の土壌と植生の経年変化を調査したので報告する。 |