1992年に開催された「環境と開発に関する国連会議(地球サミット)」において、地球の環境と開発問題に対し、「持続可能な開発」として「将来の世代の要求を満たしつつ、現在の世代の要求を満足させるような開発」という概念が採択された。この持続可能な開発とは、自然環境や生態系に対する保全型の開発、生態学的な開発を指すものであり、様々な分野でそのための努力が払われるようになってきた。こうした流れの中、運輸省港湾局では、今後の港湾環境政策のあり方を「環境と共生する港湾(エコポート)」として取りまとめ(運輸省港湾局、1994)、港湾環境施策として取り組み始めている。また、漁港や海岸保全施設の整備においても、防波堤、離岸堤、護岸等の構造物に、周辺自然環境と調和し協調する機能を備えることが求められつつある。特に、沿岸漁業の盛んな北海道では、ウニ、コンブ、ホッキガイ等の漁場に近接して港が存在するため、構造物に周辺環境との共生機能を付加することは、港周辺の自然環境を保全する上でも、沿岸漁業との摩擦を回避する上でも重要な問題となっている。開発土木研究所は、従来より、上記の観点に立った港湾・漁港構造物周辺の生態調査を行い、構造物が岩礁性生物に対して、天然岩礁と同様に良好な生息環境を提供していることを明らかにするとともに、構造物が持つ生息環境形成機能を向上させるための様々な取り組みを行ってきた。本論では、防波堤等の構造物と海産生物の関わり方を述べた後に、生態系の形成に重要な役割を果たす海藻群落(特に、コンブ群落)の形成を助長する機能を備えた防波堤や護岸が備えるべき要件を整理し、構造物の建設例とその効果について報告する。 |