近年、アサリの需要が増大しているにもかかわらず、全国的にはアサリの生産量は著しく減少している。1985年までは14万トン程度で推移してきた生産量が、1992年には6万トンにまで落ち込んでいる。これに対し、北海道では1985年に760トンであった生産量が1992年には1340トンにまで増加し、全国の生産量の2%を占めている。北海道の主要漁場は根室、釧路管内の野付湾、風蓮湖、温根沼、火散布、藻散布、厚岸湾で道内の99.9%が生産されている。これらの漁場での増産の努力の他、1994年からはサロマ湖での新たな漁場造成や、能取湖での漁業権の設定など、北海道内ではアサリ増産に対する気運が高まっている。アサリ漁場を造成する際には、アサリの生息を制限する環境要因について検討する必要がある。筆者らはこれまでに底質の硬度に着目し、アサリの生息との関連性を尾岱沼の造成漁場において調査・検討してきた。その結果、底質の硬度がアサリの生息に影響を及ぼしていると推測された。そこで、今回は他のアサリ漁場においても硬度とアサリ生息量の関係を調べ、前回得られた結果について検証を試みた。底質の硬度はアサリの生死に密接にかかわる潜砂行動の制限要因の一つと考えられることから、同じ漁場内でも硬度が異なる地点でのアサリの潜砂速度について現地実験により検討した。底質の硬度はその場の波や流れの掃流力や淘汰作用により影響を受け、徐々に変動していくと考えられる。しかし、津波のような強い流れが作用した場合、底質が瞬時に変わり、その後再び場の定常的な流況に対応した粒度組成と硬度に変化していくと推測される。そこで、尾岱沼での北海道東方沖地震により発生した津波により底質の硬度と粒度がどのように変化したのか解析を行った。 |