苫小牧東港においては従来より「底うねり」と称する海表面が比較的静穏であるにもかかわらず、係留船舶が大きく動揺する現象が報告されており、係留索、船体、荷役施設等に様々な障害を引き起こしている。昨年度は船体動揺現象の定量的把握と発生メカニズムの検討を目指した調査の第3報として、現地調査と船体動揺解析結果等を報告した。第3報の内容を含む当事務所が設置した平成6年度における苫小牧東港静穏度対策検討委員会(委員長:上田茂、鳥取大学工学部土木工学科教授)における主要な検討結果は以下の通りである。①H6年9月18日に係留中のENERGY PIONEER号にて発生した船体動揺現象に対し、長周期動揺データとしては画期的かつ非常に貴重な、発生から離岸に至る約10時間の連続的な船体動揺画像、及び港内外同時波浪観測結果が得られた。船体動揺発生時に同時に長周期波高が実測されているのは、H7年度現在でも全国でこの1件のみである。②この観測データより、動揺開始時・荷役中止時・離岸時の各段階の動揺量とスペクトル波形、及び各段階の長周期波高とスペクトル波形が初めて得られ、この双方がよく対応することより、船体動揺に長周期波高が大きく影響していることが定量的に裏付けられた。③長周期動揺データに基づく船体動揺シミュレーションにより、苫小牧東港における動揺被害の主要な要因であるサージ方向の動揺について、動揺量及び長周期成分側のスペクトル伝達率双方につき、経時変化の面からも再現された。以上の委員会での検討を踏まえ、本報文では以下の3点に重点を置き、現地観測・解析結果を報告する。①東港における長周期波の侵入・増幅特性(第1章)②東港における長周期波に対する静穏度の評価(第2章〉③係留索による長周期波対策の効果の検討(第3章) |