成熟化社会をむかえ、快適で高質な余暇空間としての社会資本の整備が着々と進められており、港湾においては緑地や親水性の護岸など人々が余暇を過ごすための空間の提供を積極的に進めてきた。このような港の余暇空間の整備は、産業や物流の活動などによって人々を遠ざけてきた港の評価を改善し、港で余暇活動を行う人々の満足感を高め、さらなる集客の効果をもたらすものと考えられる。しかし、現在、港の余暇空間の整備は、ほとんどがケースバイケースで工夫して進められているのが実状であり、余暇空間への投資が拡大するとともに、どのような余暇空間を提供すれば、どのような効果をあげることができるかについて評価できる手法の確立が望まれてきている。本研究は、港の余暇空間の整備を最も身近に感じていると考えられる港背後の住民を対象として、港の余暇空間の整備を行うと(Ⅰ段階)、住民意識が向上し(Ⅱ段階)、住民の余暇利用が増加する(Ⅲ投階)という3つの段階をたどって港の余暇空間の効果が発揮されていくものと考え、これらの関係を実証的に研究することによって、港の余暇空間整備の評価手法を確立することを目的としている。本報文は、1.において港の余暇空間整備の評価手法の考え方を記述し、2.において平成6年度に実施した「港周辺地域の住民に対するアンケート調査」の分析結果を記述する。ここで、港に対する住民意識と余暇利用についての指標を作成し、これらの指標の関係を分析することによって、住民意識が向上して(Ⅱ段階)、住民の余暇利用が増加する(Ⅲ段階)過程を明らかにした。さらに、今後実施することを検討すべき課題として、3.においては、現場実験という方法を使って、余暇空間の整備を行うと(Ⅰ段階)、住民意識が向上する(Ⅱ段階)過程を明らかにするための分折方法を紹介する。 |