サロマ湖漁港はオホーツク海に面するサロマ湖第一湖口部に位置する第4種漁港でオホーツク海で操業する漁船の避難港として平成2年から整備に着手した。北海道のオホーツク海沿岸には、オホーツク港北西海域で結氷した海水が北西の季節風と東カラフト海流により毎年運ばれてくる。沿岸への流氷到来時期は年によって異なるが、おおよそ1月下旬から2月上旬にかけてである。一方、サロマ湖の湖水が結氷する初日は昭和40年代には12月中旬であったものの年とともに徐々に遅れる傾向があり、近年では2月上旬前後が多く、平成元年のようにほとんど結氷しなかった年もあった。オホーツク海沿岸に流氷が到来する以前に湖内が結氷していた場合には氷塊が湖口から流入することはない。しかし、湖内結氷が流氷到来時に終了しなくなってきた近年、湖口からの氷塊の進入によって湖内全域で行われている養殖施設や漁船の被害が多発してきていた。サロマ湖内の各漁港では、流氷到来前のオホーツク海で操業が可能な時期であっても、湖内の結氷を遅延させる理由で漁船出漁の自粛を余儀なくされている現状にある。したがって、漁獲高に与える影響も大きくまた、氷魂の進入により発生する膨大な額の漁業被害は漁業者にとって深刻な問題であった。湖外から流入する流氷を制御し安全な航路を長期間確保することを目的に本防波堤(防氷)は計画さたものである。平成3年度より委員会を設置して施設の設置位置、構造形式、設計手法等の検討を重ね平成6年度より工事に着手したものである。本報文は、防波堤(防氷)の本体工構造が実海域で初めて採用されたIce Boom(流氷制御機能を有する浮体式構造)であることから、主としてその設計手法に関して報告するものである。 |