近年、水辺の自然環境の保全、自然と人間の共生、自然の再生を目指した河川事業が各地で実施されはじめている。このような河川事業を、本格的に展開していくためには、新たに創出される河川環境の公益的機能の効果について適切に評価しておく必要がある。しかしながら、親水機能の整備や自然環境の再生・保全などによる効果は、その発現形態が余暇活動や生活環境の高質化に対する心理的満足として現れたり、きれいな水や空気として得られたりもするなど一般的な市場経済による直接的な評価を行うことが難しい。そのため多様かつ大きな効果を有しているにも関わらず適正な評価が行われているとは言い難い。本研究ではこれまで、豊平川流域住民を対象として河川事業に対する意識調査や意識構造の分析及び河川空間の利用価値に対する調査分析を行い、住民の河川事業に対する認識度を重み付け(ウエイト)により定量的に把握するとともに河川の利用価値としての便益を効用額として貨幣タームで求めてきた。さらに事業の事前評価に資するため、この効用額を目的変数として予測するモデルを、整備される施設や設備規模(主に面積)などを制御変数とした重回帰モデルにより求めた。そこで、本年度においては、治水・利水以外の河川の多様な機能を環境機能として位置付けこれまで検討してきた。河川利用の便益を含めた環境機能による便益について検討を行い、環境機能の体系的整理と便益についての評価を試みた。 |