ダム流入量の把握や河川の出水予測をおこなう上で、精度の高い面的な降雨量の把握が必要である。現在、大半の洪水予測システムは流域平均雨量を入力値としているが、降雨は決して一様に降るわけではなく、流出に際してはそれぞれの場所からの遅れを考慮する必要がある。この際、地上雨量計は地点毎の真値はわかるものの、空間的な分布を把握するところまで高密度に配されているわけではない。特に維持管理上の問題から、標高の高い1,000m以上の箇所には雨量計の設置されている例が少なく、先に指摘したような山岳部の降雨を的確に補足することは難しい。そこで、流域を万遍なくカバーし、降雨の空間分布をモニタリングするため、レーダー雨量計の利用が有効である。このような中、北海道開発局ではレーダー雨雪量計による降水観測システムの確立を図っており、道央・道南・道東・道北の4基のレーダーで北海道全域がカバーされようとしている。ところで、レーダーによる降雨観測やそれを利用しての降雨予測については、これまで様々な研究事例がみられるが、今後の発展をみるには、従来型レーダーでは得られない情報を観測する必要があることで一致している。これに関連して、基礎研究レベルでは二重偏波レーダーやドップラーレーダーの情報から予測の初期値を得る方法が検討されている。さらに北海道開発局においても、平成5年10月に稼動を開始した道東レーダーは、可変仰角によるアンテナ走査で3次元降水観測結果の提供が可能となった。以上の動向を背景に、本研究は降雨予測の精度向上のため、既往の2次元レーダーによる予測手法の問題点を指摘し、3次元レーダーによる新たな予測手法を提案する。 |