1993年の全国の乳牛頭数が207万頭で、1960年の82万頭の2.5倍に増加した。一方、1993年の飼養戸数は5.1万戸で、1960年の41万戸の1/8に減少した。すなわち、酪農が振興されるなかで、規模拡大が進展してきた。この間、全国の乳牛頭数に対する北海道の割合は22%から45%に、また、北海道に対す十勝の割合は15%から23%に増加してきた。1960年の戸当りの乳牛飼養頭数は全国、北海道および十勝ともに、2~3頭と小規模であり、地域による格差は小さかった。しかし、1993年の北海道の値は70頭で、全国の約40頭の1.7倍であり、十勝はさらに北海道を上回っている。また、1960年の経産牛1頭当りの産乳量は全国が約4t/年で、北海道はその値を下回っていたが、1993年には全国の6.7t/年に対し、北海道は7.0t/年、十勝はさらに大きく、7.4t/年である。すなわち、全国のなかでも北海道で、また、北海道の中でも十勝で高生産性の酪農が重点的に振興されてきた。このような酪農の振興に、預託牛の育成と乾草の供給を行う公共牧場の存在が大きな役割を果たしてきた。十勝管内の公共牧場面積は13.2千haであるが、国営草地開発事業により、1970年代に4牧場3520ha、1980年代に5牧場3140haの公共草地が造成されており、同事業が十勝の酪農の進行に果たした役割は極めて大きい。しかし、公共牧場は立地条件の厳しい土地に、整備・造成されているため、造成後20年余を経過した草地では、荒廃が進行している公共牧場もあり、牧場の運営管理に支障をきたす場合も少なくない。荒廃要因のひとつに、牛の歩行に伴い、裸地となった牛道が形成され、それに起因する土壌侵食や草生の悪化がある。本報告では、公共草地での牛道による荒廃状況とその対策案について検討した。 |