北海道日本海沿岸域の磯焼け対策として、磯焼けの主たる原因とされるウニ類の摂餌圧を低減させ、排除したウニを磯場の袋間を利用した養殖場で給餌養殖する方策が提案されている。しかしながら、日本海沿岸域には養殖場に適した静穏水域がないため、養殖場を造成するためには波浪制御施設が必要となってくる。また、ウニ類の摂餌活動におよぼす波・流れの影響については解明が緒についたばかりで、生物の生息許容限界から得られる施設整備基準は検討されていないのが現状である。そこで著者らは、同沿岸域に多数分布する平磯場の袋間をウニの養殖場として整備する場合について、工学的側面から静穏域を確保するための消波施設の構造・配置について水理模型実験による検討を行ってきた。また、砕波帯の波浪場の計算法として代表的な非定常緩勾配方程式による数値計算が、袋間のような場所においても適用可能であることを検討してきた。さらに生物学的側面からは、ウニ類の摂餌活動における流れの影響について現地観測を実施し、流れによる摂餌許容限界の解明を進めてきた。本報告では、袋間にウニ類の摂餌活動に及ぼす流れの影響を考慮に入れ、生育に適した環境を持った養殖場を整備するための消波施設の設計手法について検討する。また、これに関連して消波施設による袋間内の波浪制御効果を数値計算によって求め、設計の基礎資料として検討を行う。 |