近年ダム事業においては、水資源の活用ばかりでなくダム景観をはじめとした環境問題についても関心が寄せられている。また、濁水や富栄養化等の水質に関する問題は、水資源の保全という立場だけでなくダム周辺の環境に与える影響が大きいことからもその対策を講じていかなければならない。幾春別川総合開発では、既存の桂沢ダムの建設が計画されているが、現桂沢ダムの濁水現象は完成直後から見受けられ、新ダム完成後も同様の状況が予想されている。幾春別川総合開発の一環として、これまでに現桂沢ダムの濁水挙動のメカニズムを解明することを目的とした濁水調査が実施され結果報告もなされている。これらの報告によれば、例年春の融雪期(4~5月)、夏の水位低下期(8月)、秋の水位上昇期(9~11月)に濁度が上昇すること、また流入河川からは高濁度の流入があることが明らかになっているが、濁水挙動のメカニズムそのものの解明までには至っていない。現在当事業所では、濁水現象の解析にとどまらず、嵩上げ後の新桂沢ダムの貯水池の拡大にともなう水質状況の予測も含めた検討を行うために、数値解析手法を用いて濁水現象をはじめとする各水質項目についてのシミュレーションを行うことを試みている。本報告ではその第一報として、現桂沢ダムの水質状況を再現計算することにより解析モデルの妥当性についての考察を行った。 |