出水時の河川において、流れと河床は相互に密接に関係していることは古くからの知見であり、その現象を明確にすることは洪水管理において重要な課題である。しかし、実際にはそれぞれの現地における複雑な条件があるため、従来から得られてきた水理学的な解析結果や考察が実際に実河川の現象を的確に説明しているか否かの検証は現在でも出水時のデータの不足から十分になされているとは言えない。昭和56年8月に、石狩川は当時の計画規模を上回る大洪水を経験した。その際、観測されたデータはその後の河道計画を立案する上でも非常に貴重な資料となっている。しかし、その重要性に反し、河川抵抗や流れの状態に大きな影響を与えている河床形状に関し、面的自系列的に詳細な観測を行った例はあまり多くない。この原因として、まず、出水時の河川において実際に現地に出向き観測を行うことに対し、機動性の面からかなりの制約を受けていること。また、実河川での洪水時の観測は、スケールの大きさや複雑さから調査観測手法の進展も進んでおらず、旧態然とした手法により行われている。さらに現地での観測において直接船等により観測を行うことが非常に困難で危険な作業となることがあげられる。これら現地観測上の問題点を解決するため木下らはラジオコントロールにより地上から無人船(ラジコンエアーボート)を操作して河床形状を観測する手法を開発し、出水時に河床形状観測を試みている。しかし、センサーから得られたデータをボート内に直接取り込んでいるため、リアルタイムに河床形状を確認しながら観測を行うことができない。このことは不良データへの対応が早急にできず、観測の融通性を欠くことにつながる。そこで、著者らは安全で迅速に広範囲の観測ができ、しかもリアルタイムに観測データを得ることができるように、木下らの手法をさらに発展させ無線によりデータ転送を行う手法を開発した。本文では開発した手法、および実際に小出水時に河床形状の観測を行った結果について報告する。 |