親水性の防波堤や護岸は、快適な海の環境を楽しむことのできる施設として、近年各地で整備されつつある。しかしながら、防波堤や護岸は本来荒波から背後を守るための施設であるために、時には越波が生じることがあり、そこを訪れる人々にとって必ずしも安全な場所とはいえない。実際に親水性施設を整備する際には人に対して十分安全となるように配慮することが最低の要件であり、それを設計に反映することができる手法が不可欠である。親水性施設上の人の安全を確保する検討を行うためには、自然条件に対して実際の人の危険を算定する方法が必要である。高橋らは、波浪に対する人の危険度の見積方法を既に提案しており、堤体前面での打ち上げ高さと人の危険を定量的に関係づけている。また、実際の算定される危険を用いて施設の安全性を評価する指標も既に提案されている。本報告は、既往の安全性評価指標を実際に算定する方法を明らかにし、今後の親水性施設整備に資することを目的としている。2章において、防波堤上の危険性とそれに対する安全対策の考え方を整理する。3章に、人が実際に危険になるときの波浪条件の算定法を示すとともに、それを用いた安全性の評価方法とその検討手順についても解説する。4章に、安全性評価方法の利用例を示す。 |