高波浪時の越波が利用上の障害となっている護岸では、天端の嵩上げを行うことが効果的かつ一般的な対策である。ところが近年は護岸背後地の景観性向上の要請や、小型船舶が出入港する際の見通しを妨げないようにする必要上から、護岸の天端高をできるだけ上げないようにすることが求められてきている。こうした相反する条件を満足できる方法として、二重堤方式への改良が提案されている。この対策工は、沖合にある程度の距離を置いて離岸堤を建設する工法である。両者に挟まれた比較的静穏な水域は遊水部と呼ばれ、水産協調や海洋性レクリエーションなどの高度利用も可能である。これまで二重堤の波力や越波特性については、合田ら、佐伯ら、山本ら、高山ら、山中らによって系統的な研究が行われている。これらの研究成果により、比較的平坦な海底地形においては、二重堤方式が越波低減に対して護岸の高天端化に代わりうる方法であることがわかっている。しかし、海底地形が急勾配の場合では、二重堤の越波低減効果が明らかになっていない。本報告では、はじめに護岸前面の海底勾配が比較的緩やかな場合について、既往の研究成果にもとづいて対策工の手順を示す。つぎに、急勾配の海底地形における適用性について、新たに2次元水理模型実験により検討する。実験では、護岸と離岸堤の各種の組み合わせによる、越波低減効果の違いを明らかにする。最後に急勾配の現地事例に対する、二重堤方式による改良工の適用例を示す。 |