これまで海と陸との接点である海岸や港湾では、主に防災・物流等の本来機能上の観点から構造物が作られてきており、その結果海から人を遠ざけてしまうような施設が少なくなかった。しかしながら、近年ウォーターフロント指向の高まりから、人の利用を考慮した施設整備が望まれており、それに対応すべく海岸及び港湾において親水性護岸が整備されるようになってきている。親水性護岸とは、護岸本来の機能である背後地への防波機能を有しつつ、人の立ち入りを考慮した親水機能を付加したものである。したがって、人が立ち入る護岸背後の歩道部分などには、手すりや意匠舗装などの従来の護岸になかった施設が作られている。現在、一般的に使われている護岸設計法では、施設ごとに許容越波流量を設定し、合田の越波流量算定図を用いて護岸の構造諸元を設定している。これまで様々な観点から許容越波流量が提案されてきているが、合田らは護岸の被災事例から被災限界の越波流量を提案している。これによると背後舗装の有無で値が変わっており、舗装有りの場合0.2m3/m/s、舗装無しの場合0.05m3/m/sとしている。一方、鈴木らは全国的な護岸被災調査を実施しており、親水性護岸において手すり・舗装などの被災事例が少なくないことを指摘し、そのような施設に対する適切な許容越波流量の設定の必要性を述べている。なお、調査は被災時の最大波高から越波流量を推定するものであり、その被災限界が10E-2オーダーであるとしているが、定量的な把握にまで至っていない。本研究では、親水性施設の許容越波流量を求めることを最終的な目的としている。その第一ステップとして、護岸背後の舗装工の中で越波に対して比較的弱いインターロッキングブロック舗装を対象に、水理模型実験に基づきインター舗装の破壊メカニズムを明きらかにし、高橋らによる越波モデルを用いた破壊限界時の越波流量の算定方法を検討する。また、越波モデルを用いてインター舗装に対する許容越波流量を検討する。 |