水生植物を有する河川では、水生植物が成長し、枯死する年間のサイクルに伴い、水位が変化する特徴がある。水生植物の成長と枯死に伴う流況の変化は、水位や流量等の水理量の整理や予測を困難にしており、具体的には流量を把握する際に、水位-流量曲線が一意的に決まらないことなどが挙げられる。本研究は、水生植物を有する河川の特性と周辺湿原との関係を把握するために、水生植物を豊富に有し湿原内を蛇行しながら流下する2級河川安平川水系美々川を対象とし、昭和63年から平成7年までの水文観測、植生調査、水質調査等の結果について検討を行った。なお、本研究で調査対象とした美々川は、ラムサール条約に登録され、かつ鳥獣保護区特別地区にも指定されているウトナイ湖の最大流入河川であり、また美々川周辺は都市近郊にあって多様な自然環境が残されており、将来にわたりこれらの自然環境を保全していくことが重要である。これまでに美々川流域の湿原植生は、河川水位と密接に関係しており、湿原植生の多くが河川水位の影響を受ける環境に生育していることが確認されている。このため、美々川周辺の湿原等の自然環境を保全するにあたり、水生植物の生育環境と流況特性を明らかにし、そこから環境保全のキーワードを検討することとした。 |