近年、世界的なニーズにより環境に配慮された事業が行われている。北海道開発局が行っているAGS事業の3つの柱は生態系、水辺利用、景観である。現在までにAGS事業は水辺利用と景観について大きな成果を上げている。このことは水辺利用と景観は人間を中心とした環境整備であり、効果として把握しやすいからである。これに対し、生態系の保全は評価が困難であり、AGS工法の中で一番遅れている状況にある。以上のことから生態系に関する基礎的研究はAGS工法の今後の展開に対し重要な位置付けとなる。既存の生態系に関する調査研究の多くは「調査が部分的かつ短期的であること。」、「調査結果には不確定な要素が多く含まれていること。」、「調査結果を事業に結びつける方法が確立されていないこと。」等の理由により、実際の事業に結びついていない。これらのことを改善するためには、流域スケールでの生態系の把握、長期的なデータの蓄積および調査結果から読みとれる事項を明確にする必要がある。以上のことから、本研究ではモデル河川を選定し、流域の数ヵ所に調査ポイントを設け、生息魚類の生息環境調査を経年的に行っている。このなかで流域全体としての生息魚の生息場の変化(特に昼と夜の生息場)、産卵場、越冬場等の把握を行い、実際の河川における魚類の良好な生息環境について検討を行った。 |