近年、地球レベルにおいて環境を保護しようとする方向に考え方や姿勢が変わってきている。このような現状の中で、自然環境を理解した上で河川行政を行うことは、ますます重要になるであろう。網走湖は網走川下流に位置し、海と湖流出口との距離が約7kmと近く、海水の流入出がある汽水湖である。古くから漁業が盛んに営まれており、美しい自然環境を有することから国定公園に指定されている。近年、湖内の塩淡境界層の上昇から青潮やアオコの発生が問題となっている。その貴重な自然環境保全のための環境を理解した水環境回復案の検討が必要になる。このため、研究グループにより、青潮の発生メカニズムやその間接的要因となる湖内への塩水侵入について、現地観測を伴う研究が進められてきた。網走開発建設部では水質浄化対策について多方面からの検討を行い、基本となる水理現象についても地域への公開を行っている。このような水質浄化対策立案のために、より詳細な現地データをベースとした検討が必要となる。しかし、特に塩水遡上や湖内へ侵入などは比較的短時間で生じる現象であるため、現象把握に必要な現地データを得るのにかなりの労力を求められる。現在、海洋観測で活躍中の3次元超音波多層式流速計(ADCP)は、近年、高周波数の測定部が開発され、水深の浅いところ(河川、湖沼)での観測が可能となった。また、その他にも高速、高密度でデータを得ることが可能な測量機器が開発されてきた。本文は、これらの計測機器を利用して、これまで網走湖流出口付近の塩水の流入出について時間、空間の変化に着目した密な観測から現象把握を試みたので報告する。 |