| 十勝地域における農業経営の形態は、管内中央に位置する帯広市を中心に、同心円を描いて畑作→畑・酪混合→酪農と変化している。農業戸数は約8，600戸、耕地面積は約26万haで、1戸当たりの耕地面積は30haにおよぶ大規模機械化農業が展開され、十勝はまさに土地利用型農業の代表地といえる。主要作目は畑作4品の小麦・ばれいしょ・，豆類・てんさいに加え、飼料作物の牧草である。牧草地の面積は8.2万haで全耕地面積の32%を占めるが、乳・肉牛の飼養頭数は地域人口36万人を上回る約37万頭におよび、牧草地1ha当たり4.5頭を飼養する多頭飼養地帯でもある。その結果、十勝では土地生産性が向上した反面、牧草畑に還元する糞尿の処理が地域の大きな課題となっている。こうした状況の中で、対策のひとつとして、地域では土地改良事業が推進され、牧草地に対しても農業用水を利用して効率的に糞尿還元を行う肥培かんがいが進められている。この施設は作物増収効果及び営農経費の節減等を目的として実施しているが、施設費や施設運転経費の軽減、糞尿の施用基準や環境保全への配慮など、更に地域に適合したシステムへの検討が必要となっている。そこで、帯建では大学および農業試験場等の学識者で構成する十勝地域環境保全型農業高度化検討委員会を設置して、これらの課題に対応すべく検討を進めている。今年度までに検討委員会において、牧草畑へのスラリー施用効果の検証やシステム稼働に伴う河川水質改善の確認など様々な調査成果があげられている。今回は上記項目の中から糞尿の草地還元調査において、効果的な施用方法やその有効性などについて報告する。 |
