近年、北海道内においてはアサリの漁獲が増加し、それに伴いアサリ漁場造成も増加傾向にある。天然干潟の少ない北海道では盛土による漁場造成が一般的であるが、造成は近隣の天然漁場の地盤高を参考に行われており、周辺の流動環境や温度環境などの物理環境をふまえた詳細な造成手法の検討はあまり行われていない。一方、九州等では広大な干潟において古くから漁場周辺の物理環境調査が行われ、それに基づき切・盛土や作澪、潜堤設置など様々な造成手法により漁場造成が行われている。アサリ漁場をより効果的に造成するには、アサリの生息を規定する流況や温度、底質などの環境要因について考慮する必要がある。北海道のような寒冷地では、平均気温や海水温が九州と比べて著しく低い上、冬期には流氷の来襲や水面の結氷といった現象があり、九州等の主要アサリ生産地とは気象・海象条件が著しく異なっている。よって、北海道で漁場造成を行う際には、九州等の造成手法をそのまま導入するのではなく、寒冷地特有の条件に配慮しながら造成手法の検討を行うべきと考えられる。しかし、これまでに寒冷地の物理環境とアサリの生息との関係について検討された例は少ない。そこで、寒冷地の漁場造成技術の向上に寄与するため、サロマ湖および能取湖のアサリ漁場の温度環境と、サロマ湖の底質環境についての調査を行い、いくつかの知見を得たのでここに報告する。 |