都市化の進展に伴い、不浸透面積が増え、排水系統の整備が進んだことにより、雨水の流出時間が短縮し、洪水流出量が増大する傾向にある。しかし、流域の治水機能を確保する上では、河道などの治水施設の整備のみならず、保水・遊水機能を確保していくことが重要である。保水機能の保全、確保の方策としては、防災調節池や学校・公園貯留などの貯留施設が一般的であるが、これらの施設は、洪水のピーク発生を遅らせ、そのピーク流量の減少といった貯留効果はあるが、総流出量を抑制する効果はない。一方、雨水浸透施設は、前述の他に総流出量を抑制する効果があり、洪水調節施設として有効な手段である。また、平常時の河川流量や地下水の保全など、都市域の水環境の改善にも効果を発揮する。しかし、雨水浸透施設は、雨水を地盤に浸透させることによって洪水を調節する施設であることから、その効果が土質条件・地下水位、浸透能力に大きく影響を受けるため、防災調節池に比べて施設導入が遅れている面もある。本報告は、土質・地下水等の物理的条件、現地浸透試験による浸透能力等を勘案し、雨水浸透施設の設置可能条件、治水効果等について考察することで今後の治水事業に資することを目的とする。 |