河川流域における土砂の管理は、河床変動の推定、貯水池の堆砂量の把握、河川・海域の生態系への影響把握、海域への土砂供給量の把握等、多義にわたって必要とされている。特に、流域内にダム等の貯水池が存在する場合、土砂の流下量が減少し、下流に何らかの影響を与えることが多く、堆砂および流下土砂量の把握は重要である。中でも、洪水時には大量の土砂が供給され貯水池内に堆積する。従って、洪水時における貯水池内の土砂の流動特性を把握することにより、堆砂状況および下流への土砂供給量が把握できることとなる。北海道日高地方に位置する一級河川沙流川流域において、1997年8月8日~14日に台風11号くずれの熱帯低気圧とこれに刺激された停滞前線により、流域平均降雨量が100mmを超える降雨が2回発生し、二風谷ダム地点でピーク流量が1,800m3/sに達する大出水が起こった。この時、大量の濁水が二風谷ダム湖内へ流入した。本研究はこの時の二風谷ダム上下流およびダム湖内における土砂の収支を明らかにするものであり、観測は貯水池上流の支川、貯水池上流端の貯砂ダム地点、ダム堤体直上流(貯水池下流端)、ダム洪水吐きゲート(ダム直下流)および下流河川における連続採水調査による濁度・SSの連続観測および洪水時の貯水池内の流速とSSの鉛直分布の観測について行われた。さらに、貯水池内の2次元数値シミュレーションにより、濁水の挙動を再現した。この結果、ダム上下流における土砂収支、貯水池内の流速・SSの鉛直分布、粒径別の土砂収支が再現できた。 |