北海道の港湾・漁港に近接する沿岸域は、豊かな自然環境と多様な生態系が存在する空間であると同時に、高度な開発利用が行われ社会経済活動が最も活発な空間でもある。一方、近年、地球サミットやラムサール条約会議の開催などに見られるように、自然環境や生態系を保全する重要性が全地球的に認識されつつある。このような社会情勢の中で、港湾漁港の整備においても、防波堤、護岸等の構造物に周辺自然環境と調和し協調する機能を付加することが強く要請されている。豊かな自然環境に囲まれる北海道の港湾・漁港は、サケ、マス、ウニ、コンブ等の漁場と近接しているため、港湾構造物に環境共生機能を副次的に付加することは、港周辺の自然環境と共生するうえでも、また周辺で営まれる漁業活動との協調を図るうえでも重要である。実際に港湾構造物に環境共生機能を付加するためには、まず具体的には魚介類の産卵及び保全育成の場となる海藻群落の形成と保全が特に必要である。平成7年度の本研究では港湾漁港施設が本来有する環境共生機能を既往知見より整理し、その機能をさらに高めるための各種条件を示した。今年度はこれらの知見等により導入された環境共生機能を高めるための各種方策の効果を、全道各地で試験的に施工された構造物のモニタリング調査により検証し、今後の問題点や課題について検討する。 |