傾斜堤は水理機能面からは低反射で波高減衰効果がすぐれ、施工面で波浪による洗掘、沈下や地盤の凹凸に順応性があり、古くから石材の豊富な欧米では防波堤の主流を占め、我が国においても様々な目的で従来より数多く建設されてきた。近年は、傾斜堤の特徴である透過性を利用し、防波堤の本来機能に付加した海藻群落形成の助長機能を具備した背後小段を有する消波ブロック積み傾斜堤が寿都漁港、元地漁港、江良漁港などで施工されている。さらに、今回の現地観測データ取得港である抜海漁港では活魚の安定出荷を目的に、蓄養施設水面整備が行われ、その主要施設となる防波堤に採用された。このように、傾斜堤の水理機能の中で伝達波特性は、港内の静穏性を定量的に評価する上で重要な要素である。しかし、設計上必要となる①透過による波浪の伝達特性②越波による波浪伝達特性③断面形状の違いによる波浪の伝達特性④波浪の入射方向の違いによる伝達特性が十分に明らかにされていないため、設計実務者の苦慮するところとなっていた。消波ブロック積み傾斜堤の伝達特性に関しては、これまで開発土木研究所において系統的な実験が行われ、坂本らによって一般的な波高伝達率算定法が提案されている。本報告では現地観測で得られた伝達波データを用いて、同算定法の妥当性を検討したので報告するものである。 |