臨海道路において自動車の安全な通行を確保するためには、越波による影響を抑えるために適切な護岸を設置する必要がある。しかしながら、既設の道路護岸の場合には、種々の制約により護岸改良が行えない場合が少なくない。こうした個所においては、高波時に現地の越波状況を把握した上で、通行止め等の処置が講じられている。臨海道路における越波による通行障害に関しては、宇多らが国道8号線の糸魚川海岸および東名高速道路の由比海岸における事例を報告しており、全国的にみてもこうした問題を抱える区間が少なくない。北海道においても、日高管内の国道336号通称、「黄金道路」は越波の多発地帯であり、高波時には越波が発生している。この区間を管理する室蘭開発建設部浦河道路維持事務所では定期的なパトロールに加えて、千葉らが開発した越波監視システムにより取得した越波画像に基づき現地の状況を把握している。高波時における臨海道路の管理手法を高度化するためには、現地における越波状況の把握だけでなく、その予測が重要である。港湾研究室では、科学技術振興調整費による重点基礎研究に基づき、①護岸における波の打ち上げ特性の把握、②臨海道路における高波による通行障害要因の分析、③通行止および供用再開のための基準検討、を順次行う予定である。初年度に当たる平成9年度は、護岸における波の打ち上げ現象の基本特性を把握するための水理実験を行った。本報告では、直立護岸における波の打ち上げ特性および対策工の効果に関する水理実験結果の概要について報告する。 |