豊かなウォーターフロントの実現のため、港湾において親水性施設の整備が進められている。特に防波堤は海に突き出した位置にあり、景観や魚釣りを楽しむ場として魅力的な空間である。しかしながら、現状では経済性の観点から全く越波しない防波堤を建設することはできず、親水性施設として開放する場合、高波浪時における利用者の安全対策が重要な課題となっている。現在の親水性防波堤の管理運営においては、波浪注意報や警報に基づき施設の利用を制限している場合が多い。しかしながら、実際の危険は海象条件や海底地形、周囲の構造物などによって場所的、時間的に変化するものであり、波浪注意報のような比較的広域を対象とするものでは、必ずしも施設周辺の危険状況を的確に表していないこともある。例えば、太平洋側の港では波浪注意報が発令されていないときに、うねり性の波により釣り人が海中に転落する事故が発生している。そこで、防波堤周辺の危険状況を的確に判断できる新しい高波警報システム「クジラくん」を開発した。混成堤における上部工の港外側を工夫したものであり、水平に設けられた窪み(マウス部)とマウス部から天端上へと通じる切り通し(ノズル部)から成っている。波がマウス部内に衝突するときに音が発生し、かつノズル部においてしぶきが上方に上がる。これらの音としぶきによって、防波堤上の利用者や管理者に危険を知らせるものである。既往の研究では、遠藤らがマウス部から発生する音について検討しており、構造条件や波浪条件との関係を明らかにしている。本報告では、ノズル部から発生するしぶきの特性を断面および平面水理模型実験により検討した。さらに、瀬棚港において試験施工された「クジラくん」の観測を行い、実験結果の現地への適応性を検証した。 |