リベット工法に代わるものとして開発された高力ボルト摩擦接合法は、今日では鋼橋部材結合の大半に利用されている。この接合法の考え方は、荷重を添接板と部材間の摩擦力によって支持するというものである。すなわち、ボルトに大きな軸力が負荷されると、添接板・部材間に相応の摩擦係数を有することがこの接合法の基本条件となっている。このようにボルトに高軸力がかかるため、早くから高力ボルトの遅れ破壊の問題が心配され鋭意研究が進めらてきたが、現在のところ完全に解決されるに至っていない。その一方で、錆の進行に起因した添接部の脆弱化といった問題も表面化してきている。これには添接板内側・部材添接部に防錆処理をしかつ所定の摩擦係数(0.4以上)を永続的に保つことが、特殊な場合を除いて困難であるといった背景がある。このため、これらの問題を解決すべく鋼橋の部材結合法自体を見直す研究が進められてきた。近年、その成果として荷重を高力ボルトの支圧耐力とせん断耐力によって支持させる新たな部材結合法"接触式高力ボルト支圧接合法"が発表された。その後、本接合法は北海道土木技術会 鋼道路橋研究委員会制定の『北海道における鋼道路橋の設計及び施工指針』に指針案として採択され、それとほぼ時を同じくして開発局留萌開建二股橋添接部の一部に実橋として初めて利用されるなど着実な歩みを示してきた。そして今年度、接触式高力ボルト支圧接合法実用化への新たなステップとして一般国道276号虹鱒橋に同法を全面採用(ただし二次部材は除く)することとなった。本文では当該工事の製作および架設について報告するが、このうち特に架設時の桁の運動を主体として述べる。 |