ここ数年、土石流や土砂流による土砂災害が多発し、多くの人命や財産が失われている。このような土砂災害を防止、軽減する方法としては、一般的に砂防ダムが設置される。最近は、低いダムまたは床固工を有機的に連続して配置することにより、堆積空間の確保と面的な土砂抑止効果を期待する低ダム群工法を採用している例も多い。砂防施設計画を策定する場合においては、計画規模の土砂流出に対して、施設をどのように配置すると最も効果的であるか、また、その時の堆砂状況、堆積土砂量はどの程度なのか等を各種工法について検討し、最も適したものを運ばなくてはならない。このような検討は模型実験により行われている例が多く、土木試験所においても昭和58年度から低ダム群の効果について水路実験を実施しているところである。模型実験は、検討すべき事項がある程度限定されている場合においては比較的有効な手段であるが、広範囲の検討が必要であり、そのパターンも数多く考えられるような場合においては、それに必要な時間と費用は膨大なものとなり、決して有効な手段とは言えない。それに対して、数値計算はその計算法が確立された場合においては、費用も少なくてすみ精度のよい結果を得ることができる。また、数値計算法の進歩と普及により、定性的かつ定量的な把握が可能となりつつある。このような背景から、これまでに蓄積された実験データーをもとに、低ダム群または床固工群を配置した場合における土砂の移動現象、つまり河床の変動について、上流からの土砂流出がある場合とない場合の2ケースにおいて、数値シミュレーションを試みた。本報告では、数値シミュレーションの計算法と再現性について検討する。 |