一般国道231号送毛トンネルは、札幌市より約64㎞北に位置し、海岸から約2㎞内陸の標高200~300mの山地に建設された山岳トンネルである。両坑口は沢地形に設けられ、トンネル本体はやや鞍部をなす尾根下を貫通した延長1k901mの長大トンネルである。トンネルの周辺を構成する基盤岩は、新第三紀・中新世に対比される浜益層群・昆砂別熔岩層の角閃石安山岩の熔岩からなり、新鮮部は硬質緻密な岩相を呈するが、局所的に鉱化変質作用をこうむり劣性な岩盤状態となる。また、空中写真の判読によれば、送毛トンネルの方向(南北)と10°~20°の鋭角で交差する線構造が、トンネル中央付近に認められ、地質的に軟弱なゾーンの存在が推定された。本トンネルは昭和47年に着工し、5年を要して完成したが、トンネル中央部より札幌側は地質が劣性なこともあり、施工は困難をきわめ、特に完成後著しい変状をきたしたトンネル中央部の4ブロックでは、延長L=144mにわたり、支保工・覆工の変形などの災害が発生して、巻厚の増加、鉄筋の追加、そしてインバートの増設などの対策工を講じた施工履歴を有する。トンネル完成後数年間は目立った変状はなかったが、3年後の54年には中央部より札幌側の5ヵ所で歩道と縁石に若干の変状が発生した。しかし、この変状はいずれも際立った進行が認められず、規模も数cm以下と小さいものであったが、56年6月にはトンネル中央部の4ブロック(PS18k925~18k950)の約25m区間で、山側路面と縁石が約30㎝浮き上り、変位の進行も急激なことから、内空断面の縮小、覆工の破損など、トンネルの維持管理の上で少なからぬ問題を生じた。トンネル変状対策として、まず、変状原因調査(変状形態の調査と地質調査)を実施し、その地圧機構を究明した。そして、対策工法としては、アンカー工、インバート工を選定し、その施工にあたっては、埋設計器(内空変位、岩盤内変位、土圧測定、応力測定など)によって施工時の周辺地盤の挙動を監視するとともに、対策工終了後も対策工の妥当性を確認する目的で、管理計測を継続中である。本論では、対策工選定にいたるまでの経緯を概括し、対策工施工時の終了後の計測管理について報告するものである。 |