我が国が畑地かんがいに着手してから久しくなるが、今日では、畑地かんがいは、水分補給中心の湿潤かんがいだけでなく、施肥、病虫害防除、家畜糞尿処理、風食、凍露害防止、融雪促進など、営農における水利用の多様化に対応した形態へ発展させる方向で進められており、農家の関心も非常に高まってきた。現在、網走管内では、北見地区に次いで、女満別、小清水、西網走、斜網西部の各地区で、畑地かんがい事業が実施されている。昭和58年度の本地域の畑地用水使用実態調査によると、2,162haについて既に畑地かんがいが利用されており、さらに現在、実施及び計画中の15地区43,866haが完了した時点では、全畑地面積の約34%に当たる46,000haが整備済となる。また、今後は現在の実施または計画以外の市町村でも導入される事が十分にあり得るので、畑地かんがいの普及はさらに高まるものと考えられる。ところで、このように、本地域では、畑地かんがい施設は着々と整備されてきているが、これに伴ったかん水技術、施設の高度利用といったソフト面の確立には、まだ多くの課題が残されている。これは、今までの我が国のこれらの研究が、本州、四国、九州の比較的狭小の畑作地帯を対象にしたものがほとんどで、北海道特有の大規模畑作地帯における研究は少ないからである。このような理由から、大規模畑作地帯における効率的な畑作かんがい技術と施設の高度利用等について多くの課題を検討するために、昭和59年度に、大学、農業試験場等の見識者を中心として構成された「北海道畑地かんがい検討委員会」を設置した。そして、この委員会の下で、網走管内では10箇所の試験圃場が設定され、各々地域性に合った試験内容が実施されている。音根内体験圃場は、国営畑地帯総合土地改良パイロット事業 斜網西部地区に造成された1圃場で、受益者に畑地かんがいを体験してもらいながら、昭和60年度から運営している。今回は、斜網西部地区 国営畑地帯総合土地改良事業と体験圃場施設の概要、試験方法、調査内容及び本年度調査結果について報告するものである。 |