網走開発建設部管内における国営畑地かんがい事業は、昭和60年度現在で5地区約30,000haを実施している。これに、調査・全計地区を含めると、9地区約47,000haの事業規模となり、管内耕地面積の約30%におよんでいる。しかし、地域農業者にとって畑地かんがいの必要性に対する認識は高いものの、技術的経験が一部の篤農家に限られており、その歴史も浅く、水田かんがいのように営農技術の一環としては確立されていない。このような状況下においての事業推進は、畑地かんがいを基軸とした営農改善を平行したて進めなければ、事業目的の早期発見と、農業経営の安定的発展は望めるものではない。このため小清水地区内に設置された畑地かんがい体験圃場を使用して、昭和57年度より5ヵ年の期間をもって「営農改善対策推進調査」を、6戸の農家と地域の関係機関の参加を得て実施している。畑地かんがいの計画諸元の多くは、計画地域の土壌水分特性によって決定されている。しかし、計画諸元の決定に直接関連していない部分での土壌特性、例えばかんがいによる地力及び肥料効果の変化等についての対策を含めることにより、より安定したかんがい効果を得ることができるものと考えられる。本報は、営農改善対策推進調査の中より『かん水による土壌肥料の変化』について昭和57~60年度の調査結果をとりまとめて報告するものである。 |