我が国は、地震・火山活動が活発な環太平洋変動帯に位置すると同時に、台風・豪雨の常襲地帯でもあり、また冬期には豪雪に見舞われやすいという国土条件の下に置かれている。このように、災害を受けやすい国土に多くの人々が生活し、そこで高密度な活動が展開されている。近年においては、人口・産業の集中の結果、急傾斜地・低地の軟弱地盤地域・地盤沈下地域へと居住地が拡大し、国土構造は災害に対しより脆弱なものとなっている。さらに、高齢化・高度情報化等により社会の変化は、安全に対する要請を高め、より高い水準での整備を治山・治水事業に求めることになろう。なぜならば、新しい社会は災害に対して脆弱であり、災害を受けた場合には致命的な被害を被るおそれがあるためである。維持管理費の増大による新規投資の減少という状況の下で、治山・治水に求められる安全性を確保するために、ハード面での着実な整備を進めるとともに、災害予知・救難体制の確立・適正な土地利用への誘導等ソフト面での対策に一層配慮する必要がある。本研究では、前述したような社会的背景や公共投資の性格や動向を踏まえ、北海道の発展形態を主に治水事業との関連で捉えようとするものである。さらに、内在するダメージポテンシャル・新たなニーズおよび流域の発展ポテンシャルを把握し、今後の治水事業のあるべき姿を追求するものである。特に、治水事業に対する公共投資の「公共投資としての位置付け」を念頭におき、21世紀へ向けての治水事業を展望するものである。 |