流出モデルには多くの種類があるが、大別すると貯留関数法に代表される集中定数系モデル、等価粗度法に代表される分布定数系モデルがある。貯留関数法は流出現象を比較的簡単な方程式で表現しており、計算時間も短く済む利点がある。しかしながら含まれるモデルパラメータと流出に関わる因子との間になんら定量的な意味付けがなされていない。一方等価粗度法は斜面上の雨水流を水理学的に表現しており、より合理的なモデルであると考えられているが、計算時間がかかりすぎる欠点がある。貯留関数法は計算が容易であるが、1洪水で良く適合したパラメータが他の洪水では適合しないなど、実用上の汎用性に欠けていると言わざるを得ない。河川研究室では等価粗度モデルから導かれた貯留関数モデルを採用し、全道37小流域99ケースの洪水例に適用してその有効性を検証してきた。採用したモデルはそのパラメータがすべて流域特性値、降雨特性値等で意味付けられている点に最大の特徴がある。本報告では採用貯留関数モデルを用いて実際にどのように流出計算を行うかを説明を加える。実用面での理解を深めるため、実際に数例の洪水資料を用いてここで示す手順に従って計算してみることをすすめる。 |