近年、道内に建設される大型係留施設は、鋼矢板式岸壁等、鋼材を使用して施工されるものが多くなってきている。一般に大型岸壁を施工する場合、重力式岸壁に比較して鋼矢板式岸壁が経済的になる場合が多いのがその理由である。また、基礎地盤の強度が低い場合には、鋼杭使用の桟橋式の構造がしばしば用いられる。中詰土の土圧により発生するフープテンションを利用したセル式構造も、鋼材の使用により可能となっている。こうした背景を考えると、今後とも港湾構造物に鋼材が継続的に使用されてゆくであろうことが予想される。鋼材には、その大きな強度、品質に対する高い信頼性、大量生産による低コスト等の構造材料に必要な長所を有しているため、建設材料として広く普及してきたが、一方、その大きな欠点の一つとして腐食の問題を抱えている。港湾においても、以前から鋼材を使用しての施設の築造には、鋼材の腐食対策が重要視されてきた。それにもかかわらず、これまで鋼構造港湾施設の腐食の実態については本格的に調査された事例が極めて少ない。港湾建設課では、今後建設される新規施設においてどのような設計・施工が望ましいかを検討する目的で、昭和59年度に全道102の係留施設を中心にした鋼構造港湾施設を対象に、鋼材の腐食実態調査を実施した。本調査の概要については、昭和60年度の技術研究発表会で報告を行っているが、今回は、その第2報として調査成果をとりまとめて報告する。 |