抑止杭の設計法は種々提案されているが、地すべり形態が多様なためか設計値と実測値との関係は、かなりかけ離れた値を示すことが多く、設計法が確立されているとはいい難い。その反面、抑止杭は地すべりにおける移動層・不動層の両層に施工される弾性構造物であり、部材の応力状態および変位を的確に計測することで、地すべりの挙動パターンおよび作用力を、比較的精度よく把握することが出来ると考えられる。このため、地すべり抑止杭の設計精度の向上および基準化の可能性の検討、さらに地すべり地帯に設けられる構造物基礎の設計に資することを目的とし、昭和59年度から調査・研究を行なってきている。これまでの経緯および調査規模としては、初年度は過去3年間の設計実績と施工実態の調査を行ない報告を行なっており、60年度は2箇所を対象として、計測と解析を行ない報告を行なった。また、規模としては、現在までに6箇所を数えている。その内、2箇所は約1年と2、3か月の経過日数となるが、解析対象となるほどの顕著な応力および杭変位を示さず経過している。さらに、1箇所の方は61年末に暫定施工として終了しており、これも対象となり得ない状況となっている。本年度は、これまでの切土型2箇所に対し、盛土型の計測結果が得られたので解析と考察を行ない、さらに、それぞれの形態の中に定性的と考えられる点がみられるため、段階的な位置付けとして、これまでの調査結果を総括し報告する。 |